2018.12.04公開。
登場人物:久森・伊勢崎・透野・矢後
カードゲームの新弾を朝早く買いに行った久森とそのカードを見に来る伊勢崎と光希くんの話。
久森晃人、絶対カードゲームやってる。
久森が朝からトレーディングカードショップでやっているカードゲームの新弾を手に入れて、合宿所に戻ると伊勢崎がやたらワクワクした表情で待ち構えていた。
「ドラスピの新弾でしょ? もう開けた? 見せて見せて!」
「伊勢崎さんは買いに行かなかったんですか?」
「朝早いのは苦手なんだよ。ドラスピ、俺も光希もやってるけど、ここでガチ勢って久森くんくらいしかいないしさぁ。一孝はカードゲームは好かんって言ってやらないし。新弾、久森くんが買ったら見せてもらおうと思ってたんだー」
ここでガチ勢とエンジョイ勢の違いが出てしまうのか……。そう思いながら、伊勢崎にされるがまま、食堂に連れて行かれた。食堂には透野もいて、昨日学校でもらってきたお菓子を食べているところだった。
「どうしたの? 敬さん」
「久森くんにドラスピの新弾のカード見せてもらうんだよ! 光希も見ようぜ」
「確かにそれは気になる。僕も見る」
「めちゃくちゃ期待してるところ悪いですけど、大したカードは出てないですよ」
目をキラキラさせていると伊勢崎と透野に申し訳なく思いながら、カードショップの袋から無造作に打ち込んでいたブースターパックの束を取り出した。カードショップの前で開けてみて、少しがっかりした。望みのカードは出ていない。発売したての弾で品薄だろうが、午後から暇ならコンビニ巡りでもしたい。
「ドラスピのカードは絵がきれいだからいいよね」
久森がテーブルに並べていくカードを見つめながら、透野が楽しそうに微笑む。闇に囚われし魔獣のカードもあれば、天に祈る聖女のカードもある。どれも美しく、繊細なタッチで描かれていて、確かに鑑賞用としてもいける。そもそも、透野のデッキはほとんどみんな絵がきれいだからという理由で組まれている。必要最低限の組み合わせは久森が教えた。
「おおー! 闇のドラゴンあるじゃん!」
「僕の狙いは虹のドラゴンなんです。あれがあったら、今最強の光のドラゴンにも対抗できるんですよ……!」
「え、それ、最強じゃん! 俺もコンビニ巡りしようかな!」
「それ、僕もする予定なんですけど……!」
久森が熱弁すると伊勢崎も興奮したように鼻息を鳴らした。
「あれ、久森さん。それだけ開いてないけど……」
カードショップの袋の中から、透野が目ざとく一つだけ開いていないブースターパックを見つけた。
「ああ、これ? 後で指揮官さんか頼城さんに開けてもらおうと思って……。物欲センサーで大爆死しても嫌だしね……」
「気にせず開ければいいのに」
「いや、こういうのは無欲な人に開けてもらったほうがいいんだよ。前は指揮官さんにEXRも出してもらったし、すごく縁起がいいんだ、あの人」
以前、指揮官に回してもらった十連はすごかった。久森が何十と回しても見たことがないラインナップだった。あんなことがあってから、もはや自分で回す自信を失ってしまっていた。実際、今日買ったカードも芳しくない結果だった。
「誰が開けたって、中身は変わんねーだろ」
いきなり伊勢崎でも透野でもない声が割り込んできて、思わず顔を上げる。昼寝から帰ってきたらしい、矢後だった。
「ああ、矢後さん。帰ってたんですか」
「勇成もドラスピやるー?」
「そういうのめんどくさいからやらねぇ」
ただ戦場や路地裏で暴れ回るのが好きな矢後には確かに、ちまちま戦略を考えてデッキを組むカードゲームは合わないだろう。訊かずとも分かっていた結果だ。
「矢後さんは開けないでくださいよ。数ヶ月に二、三回は死にかけてるんだから、縁起が……」
「あ、開けちまった」
「なんでですか……! 僕の話聞いてました?!」
矢後によって乱暴に開けられたパックを渡されて、久森は残念そうに一枚一枚確認する。やはり矢後の運気のせいか、クズカードばかりだ。はあ、と大きなため息を吐いてから、最後の一枚を確認する。虹色に輝く、今回の弾で一番の目玉だった。
「虹の、ドラゴン……」
「俺の縁起が、なんだって?」
「はあ……ありがとうございます?」
「なんで疑問形なんだよ」
久森の感謝が気に入らなかったのか、矢後は一発久森の後頭部を叩いてから、食堂を去って行った。
「で、久森くん! 久森くんは勇成のおかげで出たんだし、明日からコンビニ巡り協力してよ!」
「虹のドラゴン、きれいだから僕も欲しいなぁ」
「よーし、江南区のコンビニは任せた!」
「ハイ、分かりました……」
目をキラキラさせた伊勢崎と透野に見つめられては断れない。結局、コンビニ巡りをすることになるのだった。
181204
