のこった感触

机の下に落ちてる。


 日付が変わって久しい時間にやっと仕事を終えることができた。水を一杯飲んでから寝ようと食堂に入るといつもの机の下でまた、矢後が寝転がっていた。
 みんなが寝静まった後、無断で外出をして、そのままここで寝たらしく、頬に擦り傷をつけたままだった。まったく、こいつはほんまにアホや。頭の中でため息を吐きつつ、たまたまポケットに入っていたでかい絆創膏を傷に貼り付ける。
「寝るときはちゃんと部屋で寝ーや。おやすみ!」
 アホの頭をワシワシ撫でると萌黄は机の下から抜け出して、自室に帰った。

 矢後は居間のソファや床で寝てしまって、そのまま朝まで放置されることがよくある子供だった。目覚めると毛布がかけられているものの、居間で一人きりだった。
 どうやら今日もその類らしく、目が覚めるといつもの机の下だった。コンビニに行こうと思って、深夜に合宿施設を抜け出し、その間にドコソコ高校のナニガシとかいう奴が喧嘩を売ってきたので一戦交えた。もちろん勝った。勝って気持ちがいいまま、コンビニに行かずに合宿施設に帰ると自室に戻らずに何故か食堂の机の下で眠ってしまった。
 不思議なことに矢後は毛布をかぶっているし、頬に絆創膏が貼られていた。そして何より誰かに頭を撫でられたような気がする。感覚が鈍い矢後がそんな気がするのは珍しい。
「……誰?」
 撫でられた気がする頭を押さえながら矢後はぼんやり呟いた。

190901