23.ティラミス(指揮敬)

200217公開
甘々ワードパレットより
吐息/誓い/愛でる
セクロスしたいけど伊勢崎が大人になるまで待ちたい花田の話
ディープキスはしてる
指揮矢の匂わせあり


 ハア、ハア、と二つ分の吐息が絡み合う。キスで溶けた紫色の瞳がうっとり縹のことを見つめていた。そんな顔でこっちを見ないでほしい。これ以上先に進みたくなってしまう。
 縹は伊勢崎が二十歳になるまでは手を出さないと心に誓った。だから、いくら彼が性的なアプローチをしてきても耐えて、キスくらいで留めている。本当はもっと優しく、たくさんたくさん愛でてあげたい。
「ね、縹さん」
 縹のジャケットの裾を掴み、伊勢崎はどこか拗ねたように口をとがらせた。
「勇成はもうしたことあるんだって」
「何を?」
 どうして今、この場に関係ない矢後勇成の話が出てくるのだろう。先を促す。
「セックス」
「まあ、十八歳だからね……」
「オレの方が勇成より誕生日早いよ?」
「そうだね」
「そんならさ、オレの方が勇成より大人じゃん」
 勇成ばっかずるい。そう続けて、再び子供のように伊勢崎は口をとがらせる。
「勇成くんはもっと歳の近い相手としたんじゃないかな。でも、私と敬くんは大人と子供。親子くらいの差はあるよ」
「そんなの関係ないじゃん。オレは縹さんが好きだし、縹さんもオレのこと好きでしょ。それでいーじゃん。オレ、縹さんに抱かれたい」
「……私がよくないんだよ」
 ジャケットを掴む手をさらに強くする伊勢崎の顔は真剣だ。でも、縹も彼のことを真剣に考えているからこそ、まだ抱くわけにはいかなかった。
 こんな、五十代の枯れた男に熱を上げていないで、さっさと近い年頃の子と恋をたくさんしてほしい。この誓いには縹のそういう気持ちがこもっていた。
 伊勢崎に会うまで、縹は恋を知らなかった。半世紀以上、学業や仕事に専念して生きてきた。だから、初めて伊勢崎に会って恋に落ちてからずっとふわふわした、少し不思議な気持ちになっている。
 しかし、伊勢崎は縹の半分以下の年齢だ。もし、縹が結婚していて子供がいれば伊勢崎くらいだろう。息子ほどの年齢の少年に熱を上げている。彼はこれからどんどん大人になって、たくさんの人に出会うことになるだろう。また、違う人間を好きになったとき、自分の存在は邪魔になる。
 年齢を考えれば、必ず縹は伊勢崎を置いていく。彼のことを大事に思うからこそ、もっと長い間一緒にいられる他の相手と幸せになってほしかった。

(敬くん、君が大人になっても、私のことが好きならそのときは……)

 その言葉は胸に秘めたまま、縹はもう一度、伊勢崎の滑らかな顎を掴むと、その唇に再びキスをした。

200217