未来視で指揮矢のセックス視ちゃう久森は自動的に巻き込まれてしまうから可哀想。
「新手のエアドロップ痴漢なんですか、これ……嫌なんですけど」
二人の集合先である風雲児高校の校門前。矢後の手を握って未来視をしていた久森が顔を真っ赤にして、目を開けた。聞き慣れない言葉に矢後は怪訝そうに眉間にしわを寄せる。
「なにそれ」
「最近、流行ってるんですよ。スマホのエアドロップっていういろんな人とファイルを共有する機能があるんですけど、それを使って、女の子やいろんな人にエッチな画像を見せるんです」
「ふーん」
久森は顔を真っ赤にしたままエアドロップについて教えてくれるが、自分から訊いておきながら、矢後は心底どうでもよさそうな相槌を打つ。まあ、いつも通りの反応である。久森に不満はない。
「あの、あのですね。最近、矢後さんの未来を視るたびに……その、どうしても萌黄さんとの、そういう光景が視えてしまって……」
「そういうってどういう?」
あうあう歯切れの悪い久森に矢後が畳み掛けるように促す。普通わかるものなんじゃないだろうか。久森は心の中でため息を吐いた。
「いや、それくらい察してくださいよ。あの、セックスですよ、セックス。僕、知りたくなかったです。矢後さんがアナルセックスしてるなんて……しかも、矢後さんが受ける側なんですよね」
「へえ、嫌とか言いながらめちゃくちゃ視てんな」
パトロール中に出てきたイーターが大鎌に屠られて霧散し、それから合宿施設に帰って、ごはんを食べて、ちょっと昼寝をして、風呂に入った後くらいからそれは始まる。
だいたい、矢後が萌黄の部屋に入っていったり、廊下をうろついている萌黄を捕らえて、ずるずるそういう行為が始まる。たまに萌黄の方からわけのわからない誘いをかけることもある。だいたいそういうときはコスプレエッチだの、なんだのと少しマニアックなプレイをするときだ。
あんなに勝気で、人の言うことを聞かない肉食動物のような戦闘狂の男がまさか己の尻を掘らせるだなんて思いもしなかった。
「矢後さんは絶対そういうことしないと思ってました……。僕、この気持ちをどうしたらいいんですか?」
「別に。どーもしなくていーんじゃね?」
「えええ……そんな。矢後さんがイくときの顔、頭から離れないんですけど」
「お前、めちゃくちゃ視てんな」
久森は矢後の表情をあまり知らない。喧嘩や戦闘中の楽しげな顔、普段の曇り空のように気怠げな顔、ブチギレたときのかなり治安の悪い顔、まあ大まかに分けるとこんな感じだ。
矢後がイくときの顔はちょっとだけかわいい。久森はあんな顔は見たことがない。きっと、矢後との付き合いが長い三年生も見たことがないだろう。まあ、ベッドの中で見せる顔なので当たり前なのだが。
おそらく、萌黄しか見ることがないであろうその顔を自分が見てしまうのは、なんだか少しだけ罪悪感があった。
「つーかさあ、それってお前が新手のノゾキなんじゃねーの?」
「えっ」
思いついたように矢後が口を開いて、久森は首を傾げる。一瞬何を言ったか分からなかった。
「僕が覗き?」
「俺と萌黄がセックスしてても、別に他の連中は困んねーんだよ。未来なんて視れる奴、お前しかいねーし。お前がフンイキ察して、視んのやめるくらいできねーの?」
「うっ……!」
いきなりド正論をぶつけられて、久森は地味にダメージを受けた。未来視を途中でやめることは確かにできる。盲点だった。
「それとも何? お前、俺がイくの視たくて視てたわけ?……えっち」
やたらしどろもどろになった久森を見て、矢後がニヤリと笑う。どこか色気のあるそれに一層しどろもどろになってしまう。これはずるい。
「ち、違います! うう……なんかムカつく……!」
「そんなに見たいなら今度、見せてやるよ。なんなら混ぜてやろうか?」
「見せなくていいです! 僕を巻き込まないでください!」
畳み掛けるように矢後になじられて、久森はぶんぶん首を横に振る。実際に混ざってこられたら、おそらく萌黄も久森同様に混乱することであろう。もっとも、参加するつもりはさらさらないのだが。
「はあー……あの、とにかく、セックスする前にセックスするって言ってください。そこで視るのやめますから……」
「無理ありすぎるだろ」
ため息と共に解決策を出した久森に矢後の冷ややかな視線が突き刺さった。
190902
